「どれ?」って真横で声がしたからビクッとした。
顔を見ないように俯く。
無言で指差したら丁寧に説明しだしてくれるけど、逆に質問してきたりするから目を合わせないのもひと苦労。
「ヒロって不器用なんだね…?」
「うぅ…っ!」
クスクス笑いながら徐々にツボにはまったみたい。
だって嫌われたくないから……
触るなオーラ出されたら悲しくて、
下手な距離取って……勝手に拗ねてる。
「このままじゃヒロが暴走し続けちゃうからちょっとブレーキかけたんだけど……ギクシャクするんなら止めようか」
「え…?」
奈那の一言一句ですぐ不安に襲われる。
止めるって何を……?
「じゃあ、そうだな……1教科終わるまではキス禁止ってのはどう?」
「……却下」
「何でよ…!雑念だらけなんでしょ?」
「うぅ……だって、強引にキスされて困ってる奈那も可愛いから」
わわ、俺、何言ってんだぁ〜!?
慌てて訂正する。
「あ……今のはごめん、ナシ…!はい、キス禁止で構いません…」
何でこうなるんだ……
好きな人がマンツーマンで、しかも2人きりの空間で……17歳の男子高校生が禁欲なんてあんまりだぁー!!
「じゃあまずは、数学から片付けよ?」
お勉強モードの奈那も可愛いから許す。
私服だと大学生の家庭教師みたい。
こんな女子が家に来ただけで大当たりだよな。
勉強どころじゃなくなるって。
でも会いたくて家庭教師の日はダッシュで帰るんだろな。
プニッと頬を抓られ、顔を向ける。
「また違うこと考えてるでしょ?何で集中出来ないかなぁ……」
無理だよ……
本気で好きな女が近くに居て、
手を出すなって方が無理。
俺だって育ち盛りの男だよ?
今一番頭の中ハレンチなことばかりなのに。

