触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜





クリスマスイブが終業式だなんてな。
同じ朝でもやっぱり今までとは違う。
階段を降りて最初に目が合う。




「あ、ヒロおはよう」




奈那の元気な声に涼子さんや親父が気付いてくれて挨拶を交わす。
ニヤけてしまいそうになる顔を直すべくボーッとしたフリして顔を洗いに行く。




えっと、演技ってどうするんだっけ?
普通って何…!?
3日前の自分がどんなだったか思い出せない。
ヤバい……絶対変に意識しちゃう。
奈那は…!?




「あれ?ヒロ、ネクタイは?」




「え?」




「終業式にはつけなきゃでしょ?生活指導の林先生そういうの厳しいよ」




すっかり忘れてた。
奈那はちゃんとつけてる。
慌てて取りに行くけどやり方よくわかんなくて…アタフタ。
だって普段つけなくていいから楽してたのに…クソ。
携帯で締め方を検索しようとしたら隣から手が伸びてきて……




「時間ないから食べて」と促され
食べ終わった奈那が後ろに立つ。
そっか、自分に締めてる感覚でやってくれんだ。
言われた通りに従うけど何か……
後ろから抱きしめられそうな感じがしてドキドキするし食べにくい。




「何だ祐翔、ネクタイも結べないのか?」




朝から親父が絡んでくる。




「そのうち覚えるよ」




仕方ないだろ、慣れてないんだから。
良い気分なのにぶち壊すなよ、とコーヒーを流し込む。




「ヤダ、何か新婚さんみたい」と涼子さんが茶化すから危うく吹き出しそうになった。




「あ…動かないで」




「ごめん…」




え、今の会話スルーですか?
真剣にやってくれてんだね。
こっちも背筋伸ばしちゃう。
キュッと上まで結び完了。
後ろから覗き込む奈那の視線に目が泳いでしまう。




朝から良い匂いさせてんじゃないよ。
「出来た」って無邪気な笑顔。
嗚呼……今すぐ抱きしめたい。