「ヒロくんはヒロくんのペースでいいとは思うけど、なんせせっかちな私がキューピットだからなぁ〜あれよあれよと仕掛けちゃうわけよ」
「アハハ!さすがモテ女!」
また勝手に盛り上がってる。
「ほら、1秒でも早く行きたいんでしょ?行っといでよ」
有り難い言葉。
けど行こうとした身体はピタリと止まる。
振り返ってまだ俺を見てくれてる桜井さんにどうしても今伝えたくなった。
「ありがとう……奈那を知らないままひよりちゃんと出逢ってたら、秒で好きになってたと思う。でもどっちにしろひよりちゃんは俺にとって高嶺の花だけどね!」
「やかましいわ!こっちから願い下げだっつーの」
そう言いながら笑顔で手を振ってくれる。
本当、心底そう思うから。
俺を好きになってくれてありがとう。
一生の財産にします……
ゆっくり戻ると最初と同じ場所に座り、ノートを広げ勉強している姿を見つけた。
スラスラとペンを走らせ凄まじい集中力。
本棚に隠れて見惚れてる。
奈那、好きだよ。
こんな場所で聴こえないようにしか言えないなんて情けないね?
もし言えたならどんな顔するの?
笑う?聞かなかったことにする?
真っ向から「ごめんなさい」されるのかな………
真剣に伝えたら誤魔化すような真似はしないと思うんだ。
でもきっと良い結果じゃない。
気まずい雰囲気になって家を出て行く。
離れ離れになって時間が解決して………
いつか彼氏が出来て家に連れて来る……なんてことになるのかな。
嫌だ………考えたくない。
たまらなくなって奈那に背を向けた。
腕組みしてキャップを深く被り俯く。
かと言ってどうすりゃいいんだよ…………
ずっとチキン野郎呼ばわりされるのはちょっと………
悶々としてたら奈那が席を立ったことに気付く。
とっさに隠れてしまい、本当何やってんだか……

