「でも図書館では1人になりたいんだけど?」




「じゃあなるべく離れて座る……でもナンパされそうになったら速攻ガードしに行くからな」




「フフ……過保護〜」




「それくらいしかないだろ、弟がしてやれることって」




「そんな毎回毎回ナンパされないって〜」




自覚ないから一番困ってんだよ。
昨日行くって聞いた時点で一緒に行くって決めてんだ。
学校の最寄り駅から徒歩5分程で着くこの街一番の広い図書館。




カフェも併設されていて勉強スペースも至る所に設置されている。
朝の6時半から開館していて受験生がよく利用していて早くに来ないとゆとりのあるソファー席なんかは埋まってしまうみたいだ。




「ここに居るから」と素早く勉強に着手する奈那の邪魔にはならないよう少し離れた場所に腰掛けた。
窓際に向かって設置されてる2人掛けソファー。
振り向けば奈那の背中が見えてる。




チラチラ見てたけどいつの間にか日差しポカポカで寝落ちしてしまっていた。
テーブルで勉強してたはずなのに、ウトウトしてたら隣に座って来て優しく肩を貸してくれるんだ。




勝手についてきただけでもこうして一緒に居てくれる。
1人になりたいって言ってたくせに肩から伝わる体温が何故か心地良い。




「家に居ればいいのに………ありがとう、一緒に居てくれて嬉しい」と奈那の独り言。
めちゃくちゃ嬉しくて寝たフリしてるそばから口が綻びそうになる。
そっと髪を撫でてくれる手を握りしめたいけどここはグッと我慢。




静かな空間で周りにまだ人も疎らで
もしかしたらこのフロアに2人きりなんじゃないかって勘違いするほどの甘い雰囲気にやられそう。
魔物が潜んでいそうだ………