沈黙の歌姫


『あれ消しに来たのか?』


無表情で頷く結歌。


細かいことはよく分からないが結歌が落書きする訳ない。



だから俺も手伝うことにした。


『俺もやってやるよ』


そう言うと思いっきり首を横に振る。


『これお前がやったのか ?』





やってない…けどやったってことにしよう。


彼女の思考は全て顔に表れる。

かわいい奴だ。




案の定頷いた。


『嘘つくの下手だな。早くしろ。』



なんで分かるの??とでも言いたげな驚いた顔。可愛くてたまらない。



照れてるのをバレる訳にもいかないからさっさと消し始める。



なかなか落ちにくい。結歌1人じゃ何日経っても終わらなそうだ。


5時間目が始まる5分前。


片付けを終えた結歌はペコッとお辞儀した。


『またな』


そう声をかけると嬉しそうな顔をした。

俺だって知ってる。


またって言葉がどれだけ嬉しいことか。