沈黙の歌姫




『これ被って』



そう言って彼が投げてきたのはヘルメット。

そして目の前にあるのはバイク…!?


『そんなスピード出さねぇから心配すんな』



体がふわっと浮かび上がり、バイクに乗せられていた。


『お前軽すぎ。ちゃんと捕まってろ吹っ飛ぶぞ』


吹っ飛ぶって…。スピード出さないんじゃないのー!?


ポカーンとする私の手を彼は自分の腰に回した


つまり私は今彼に抱きついた状態。

恥ずかしい…。


『真っ赤だな』


意地悪そうに笑う彼。


そのまま彼は行き先も告げずに走り出した。



バイクが初めてだからなのか、物凄く速く感じて怖くなり、私は抱きつく腕の力を少しだけ強めた。