沈黙の歌姫



『帰るぞ』

戻ってきたと思ったら、彼はそう言って私の手を引く


これ以上迷惑をかけるわけには行かない。

私が手を振り払うと彼は悲しい目で振り返る。


「……。」

せっかく優しくしてくれているのにごめんなさい

心の中で何度も謝る。






『俺が守ってやる。だから、もっと頼れ』



“俺が守ってやる”



7年前の記憶が脳裏に浮かぶ。

ああそうだった。こうやって助けてくれても、結局私を見捨てるんだ。
この言葉を信じちゃいけない。結局裏切られるんだから。



私はまたペコッとお辞儀をして体育倉庫を出ようとした。