ドアを開けた途端に潮の匂いに包まれて、波の音が聞こえた
砂浜で遊んでいる人、「冷たっ」とか言いつつ、海で遊ぶ人、何故か花火をしている人までいる
花火楽しいそうだなーと思ったけれど、みんなスルーして海音と少し離れたところに移動した。
『怖かった?』
【少しだけ。】
いつでも私の心配ばかりしてくれて、本当に優しいなって思う
『ここいいだろ?』
【うん。波の音って落ち着くね】
『俺の名前、波の音みたいに人を安心させられる男になれってことで海音なんだって』
【ピッタリな名前だね。海音のそばに居ると安心するの】
『まだまだだよ。俺なんて。』
【私の名前はね、歌は人と人を結ぶ魔法だってことなんだって。お母さんが口癖のように言ってた。】
俺なんて。そう呟く彼はとても小さくて消えてしまいそうで、その悲しみに触れる勇気のない私は話を変えてしまった。
