嫁入り前の娘と2人っきりにはさせられない!と柘植親子が騒いだので、加瀨は柘植親子の車で自宅まで送られることになった。
すごく緊迫した車内になりそうだ、大丈夫なの?
「加瀨、大丈夫?ついて行こうか?」
加瀨にそう言うと
「それこそ本末転倒だろ?お前を送りにまた俺が送りに出ることになる。」
と、行って帰って行ったけど心配だ。
とりあえず、お風呂に入って上がってからスマホを見ると…嘉川からグループメッセージで一斉送信が来ていた。
『これが、有紀だよ🖤』
嘉川と頬をくっ付けているボブカットの可愛い女の子、有紀ちゃんの写真が送られてきている。
「こらっ!何故グループに一斉に送るんだ!メンバーは私と加瀨しかいないけど、加瀨のダメージを考えろっ!」
と1人で嘉川に怒鳴ってから
『可愛いじゃない。』
と返事を嘉川に返した後に、加瀨の方にだけメッセージを送った。
『加瀨、大丈夫かな?』
すると加瀨からすぐに返事が来た。
『お母さん達とは、穏便に話して機嫌よく別れたよ。明日また連絡する。』
「そっちじゃねえ!」
いやまあ、お義母達の動向も気にはなったけど、私は加瀨の恋心のダメージの方が気になる…。
グループメッセージに加瀨からのメッセージが表示された。
『有紀ちゃん可愛いな。流石、嘉川!今度会えるの楽しみにしてるよ。』
「ああっああっ…有紀ちゃん誉めちぎってるよ…ああっ、自分の想いを圧し殺して…辛い切ない…萌えるぅ尊いっ。」
加瀨の滲み出る切ない想い…。ああ、やっぱり間近で観察出来るなら加瀨の偽装彼氏の恋愛観察は無駄じゃないよぉ。早く観察してぇぇ…今イケメンフェイスを曇らせてこの文字打ってるんだと妄想するだけでどんぶり飯5杯はいけるっ!
床に萌え転がりながら、体を震わせてビクビクしていてハッと我に返った。
これじゃまるで変態じゃないか…。
急に1人で滾っていた自分が恥ずかしくなる。萌え転がるのは明日以降のお楽しみに取っておこう。
結局萌え転がるのかっ!
…というツッコミがどこからか聞こえたような気もしたが、その日はもう眠ることにした。
…。
……。
翌朝というか…10時前に目が覚めて、ノソッ…と起きだしてスマホを見た。
メッセージが5件…何だ?
全部加瀨からだった。
『おはよう。』
『早く起きろ。』
『当面泊まるだけの荷物を持って行く。』
『今から家を出る。』
『さっさと玄関を開けろ。』
リンゴーン…と下の門扉のベルが鳴っている。
寝起きのまま…応対用の画面を覗き込む。加瀨が映っている。
『まだ寝てんのかよ…おせぇ~よ。』
「今…開けます。」
朝からイケメンの襲来だ。私達、結構夜更かししたよね?私は顔もむくんでるし…瞼は重いし、体がバッキバキに凝っているんだけど、なんで加瀨だけ爽やかなの?
うちの玄関から颯爽と入ってきてジーンズにラフなニットでコート羽織ってるだけなのにイケメンですね…。
「おはよー。何?今起きたのか?顔洗ってこい…不細工さ三割増しだ。」
ってめ~!乙女の寝起きを襲っておいて、不細工とは何事だぁぁ…。
文句は心の中に押し込んで顔を洗い、寝間着を着替えて加瀨の前に出ても文句を言われない程度に整えてからリビングに行った。
「取り敢えず今日から泊まるわ~。宜しく!」
「そう…こちらこそ。(萌えを)宜しくお願い致します。」
私はペコリと頭を下げた。早速、加瀨に部屋を割り当てることにする。
「6部屋空きがあるから好きな部屋使ってね。全部見る?」
「見る、見る。」
賃貸物件の内覧に来ている人みたいんだな~と思いながら、玄関に近い部屋から中を案内する。
「うぉ~ここのベランダ見晴らし良い!」
「角部屋だからね~この部屋はシャワーとトイレが付いてるよ。」
「何だって?部屋にトイレとシャワーついてるのか⁈」
「ついてない部屋もあるよ。真ん中の二部屋。それと端の部屋と私の隣の部屋はお風呂もついてる。」
加瀨は走り込んで室内を確認している。本当に内覧に来ている人のようだ。
「別に風呂は内風呂じゃなくてもいいのか?」
「あ、勿論。大きさで言ったらバスルームの方が断然大きいし~見る?」
「見る!」
加瀨は脱衣所からバスルームに入っていってちょっとした温泉並みの大きさの浴室に大騒ぎだった。
「フフフ実はね~ちょっと来たまえ。」
加瀨を玄関の横の階段に誘う。加瀨はびっくりしている。
「ここ最上階だろう?まさか屋上行けんの?」
私は階段を上がり、屋上の扉の内鍵を開けた。
「じゃーーん!何と屋上には室内プールとジャグジーがあるのだぁ!」
加瀨は屋上に飛び出してプールとジャグジーの存在を見るとめっちゃ喜んでいた。
因みに屋上にはコテージを設置しており、お泊り気分も味わえる。ここでBBQなんていうのも乙だね。
私はパーリピーポでもない、お独り者なのでジャグジーもプールもコテージも使ったことはないけれど…。
「そうだ、加瀨。あんた中々の筋肉質なお体をしているとお見受けするけど…。」
加瀨は息を飲んで自分の体を抱きしめた。
「お前っ…透視でもしてんのかっ⁈変態っ!」
変態なのは否めない。
「ここに住むのだったら住人専用のフィットネスサロンがこの下の階にあるから、そこ使ってもいいよ。」
「何だってぇ⁈おいっお前…マジで金持ちなんだな!」
「いや母親がね?」
そうだ、加瀨と騒いでいたらお腹が空いてきた。
「加瀨~変な時間だけど、ご飯食べる?」
「食べる。」
加瀨は即答した。じゃあ朝ごはん兼昼食を食べましょうか~。