イケメンの恋愛観察日記


ショッピングモールの買い物を済ませて家に戻ると、加瀨が一旦、今住んでいるマンションに戻ってもう少し荷物を持って来ると言って、出かけようとした。

「1人で大丈夫?何か手伝おうか?」

と声をかけると、加瀨は少し思案していたが

「手伝ってくれると助かる。」

と、微笑んでくれた。ごめんよ…加瀨、あなたの綺麗な笑顔を見ると自分の邪な思いを見破られそうで胸が痛い。

そう…加瀨のマンションについて行って見たいものがあるのだ。少しでも嘉川への悲恋の執着の欠片(物的萌えグッズ)を採取出来ないかと思っているのだよ。

主に本棚の裏側とかベッドの下とか……あれ?これ息子のエロ本探そうとしている母親みたいじゃね?

心に(やま)しさを抱えたまま加瀨の住む、マンションに向かった。

車で20分少々で小綺麗なワンルームマンションの駐車場に着いた。

実は男の人の1人暮らしの部屋に突撃するのは初めてなのだ。フハハハハハッ!

「おーい、駐車場で高笑いしてると通報されるぞー。」

「すぐ参りますっ!」

慌てて、マンション入口で呆れ顔で立っている加瀨の元へダッシュした。

加瀨と共に室内に入ろうとした私は加瀨に玄関先で待て!と言われた。

「少し片づけて来る。5分待て。」

「……。」

「何だよ、その目。」

「いいえ別に…はい、残り4分40秒!」

加瀨は舌打ちをして部屋の中へ入って行った。

ちっ…舌打ちしたいのは私の方だっ。今、絶対に嘉川への愛のポエムとか嘉川のことを想いながら編んだ手編みのマフラーとか、嘉川のこと妄想しながら〇〇〇したアレを処分したりしているんだっーー!全部私によこせっ!

「3分経過ー!」

部屋の奥に向かって怒鳴ってやる。

「まだだっ!」

私は玄関先で見える範囲をチラチラと見て嘉川の愛の残像を目を光らせて探すことにした。

どこだ…どこだぁぁ?!

「おい、もういいよ…って床に這いつくばって何してるんだ?」

「はい……お邪魔します。」

片づけを無事終えた加瀨の後に続いて部屋の中へ入った。フム、典型的な1LDKマンションですね。小ざっぱりとして男の子の部屋!みたいな印象だね。

「取り敢えず、掛け布団と枕だけは持って行きたい。」

「え?それだけ?」

「布団と枕が変わると眠れねぇ…。」

そうでございますか…。

加瀨は着替えなどをもう少し持って行くと言うので、クローゼットを触っている。

チャンスだっ!

私は加瀨のベッドの枕を紙袋に詰めるフリをして、ベッドの下を覗き込んだ。

何もねぇ…。

更にタオルケットを畳んで、掛け布団を畳んで…さりげなく立ち上がり、壁に貼ってあるコルクボードに近づいた。

写真だ…。

知らない男女と若い頃の…多分大学生の頃の加瀨だ。なんだこれ、どこの芸能人だ。

他の写真を見る。これ社内旅行のだ…。3年くらい前かな?加瀨と嘉川と…ん?これ私が嘉川の横に写ってなかったっけ?私もこの写真、焼き増ししてもらって持ってるし。

あれ?写真をよく見ると……嘉川の横の端が切り取られている。私が切られている。

はっ!そうかっ?!加瀨と嘉川のツーショットにする為に、邪魔な私の写真を捨てたんだ!

あああっ!嘉川とのツーショット欲しかったよね!分かる…分かるわっ私が邪魔してごめんね〜!いくらでも煮るなり焼くなりして邪魔者(私)を捨ててやってぇ!

「食器とか…あっ!何見てんだよ?!」

写真を舐めるように見ている私に気が付いたのか、加瀨が慌てて近づいて来た。

私はニンマリ笑いながら加瀨の美麗な顔を見上げた。

「嘉川とのツーショット写真だね♡」

「…。」

「あれ~?おかしいなぁこの写真私も嘉川の横に写ってたはずだよね~?」

笑みを深めて加瀨を見詰める。加瀨は頬を赤くしている。

「いいよ、いいよ~。その代わり本棚の裏を捜索させてくれたまえ。」

「本棚の裏?」

「そうだよ。そこにあんたの愛の軌跡が隠されているんだよね?」

「愛の…はっ!え、エロい本とかそんなとこにはねーからぁ?!」

私は別の意味でニンマリした。

「そんなとこには無いのなら、あんな所には隠しているんだね…。さしずめ、下着などを入れているそのチェストの中だね?」

加瀨がビクンと肩を動かした。図星か…いや私が見たいのはエロい本じゃない。嘉川への萌え上がる愛の暴露本だ。

「見せなさいよ。」

「なっ…絶対ダメだ!」

「誰にも言わないから。」

「見せてくれたらお礼するから。」

加瀨の顔色が変わった。ええ、ええ…お望みとあらば、嘉川の使いかけの割り箸でも、会社で嘉川が飲んだ自販機の飲みかけのコーヒー缶でも…私が入手致しましょう。

私は加瀨が怯んだ隙に、チェストの引き出しを開けて加瀨の靴下が入っている奥に手を突っ込んだ。硬くて平たい物に手が触れたので、それを引き出した。

「やめっ…!」

加瀨の手を振り払いつつ、私は引き出したブツを見た。

「『オフィスは淫らに燃え盛る クールツンデレ同僚を突っ込みまくりの蜜残業』」

「声に出してタイトルを読むな!」

取り出したブツは嘉川への愛の暴露本じゃなくて、美乳のおねーさんが事務机の上でミニスカの足をおっぴろげているただのエロDVDだった…。