イケメンの恋愛観察日記


冷蔵庫の中を開けて、納豆のパックを取り出した。

「加瀨、納豆食べられる?」

「大丈夫〜。」

加瀨はキッチンの横のダイニングに来た。

「相笠の弁当のおかず、ちょこっとしか食べたことなかったからがっつり食べるの楽しみぃ。」

おお?そうかそうか~ん?いや待てよ?

「おいっそうだよ!加瀨、あんたまさか弁当まで作って欲しいとか言うのではないのか?」

加瀨は目を輝かせている。

う~んこれは家事分担までもう少し話をしておくかな?

話し合いは後でするとして、中途半端な朝食の時間になったがTHE日本の朝食みたいな感じを狙って食事を作っていく。

大根おろし(付合せはお好みでちりめんじゃこ)と納豆(付合せはお好みで青ネギ、)だし巻き、なめこの味噌汁、お漬物。

洋食も出してみた。

クロワッサン(市販)、ベーコンのアスパラ巻き、即席のコーンスープ、じゃこ入りサラダ、ヨーグルト(市販)、豆から挽いた珈琲。

キッチンテーブルに座って待っていた加瀨の前に和洋の食事を出すと、益々顔を輝かせた。

「両方食べたい!」

と加瀨は言い、さすがに加瀨の胃がびっくりするんじゃねぇかな?という心配をよそに恐ろしい速度で食べていく。

私はクロワッサンを食べながら偽装同棲に際して、料理当番をどうするか?を聞いてみた。

「洗濯と掃除は自分の分は自分でする。ただ…料理はそんなに得意じゃない。」

と、加瀨は上目遣いで私を見てきた。なんだその目は?

「そりゃそうだよね。私、加瀨が社食でもかつ丼か天丼しか食べてるのみたことないし。よし、分かった。萌えと尊さと等価交換だ。加瀨の分も料理をしよう。ただ、少しはバイト代を払いたまえ。」

加瀨はコピー用紙に『誓約書』を書いてみせてきた。おおっなるほど~。それから話し合って毎月、料理当番のバイト代として2万円支払うことになった。

安いか高いかは分からないが、私はこれでいい。

さて…。洗い物を一緒にしてくれている加瀨を見上げる。あんた~この豪華な部屋に似合う男だね!

それはともかく加瀨は結局私の隣の部屋に住むことにしたようだ。

「離れてるの寂しいから。」

と1人になったら死んじゃうウサギみたいなことを言ってきた。上目遣いはヤメロ!

そんなウサギな加瀨は自分の部屋の片づけを始めた。

さて…食い扶持が増えたので食材を買い足しておかなきゃならない。私は買い出しリストを作成する。

トイレットペーパーとお米と…醤油に味噌、なんだこれ結構な重量と(かさ)張る食材ばかりじゃないか。

私は部屋にいる加瀨に外から声をかけた。

「加瀨ぇ~私買い物に出て来るよ。留守番宜しく。」

するとすぐに加瀨が部屋から顔を出して

「ちょっと待ってよ。一緒に行っていい?荷物持つよ。」

と良く気が付くイケメンですね!を発揮してきた。

「ん~?でも結構な量だし歩きでは疲れるよ?私なら自転車に積んで持って帰れるし。」

「相笠…チャリで買い物行ってるの?お嬢様なのに?」

「お嬢じゃないよっそれにお嬢様に対して偏見があるよ~。お嬢だってチャリは乗る!因みに電動自転車だ。」

加瀨はなぜだかニヤッと笑った。

「俺、車乗ってきてるし送迎するよ。」

何だって?車?

「あんた車持ってんの?え?今乗ってきてるの…どこに停めてるの?」

「ちょっと歩いた所のパーキング。」

「早くいいなよ~。ここに二台分駐車スペース確保してるから、好きな方に置いておいて。」

加瀨は目を丸くしている。

「二台も駐車場借りているの?」

「借りてないよ、自分のだもん。」

うっかり口が滑ったけど、加瀨は気にしていないようだ。へぇ~とか言いながらコートを羽織っている。

このマンションは私の個人所有だ。駐車場は兄と母が車で来た時の為に最初から二台分空けてある。加瀨は私の親に遭遇しても私に対する対応は前と変わらない。

そうか心に秘める嘉川の熱い想いが、財力も権力も寄せ付けないのだな、流石輝き男子!

加瀨と一緒にマンションを出る。あ、そうだ。加瀨を手招きしてマンションのエントランスホールのコンシェルジュサービスのカウンターへ向かう。

「おはようございます、相笠様。」

「おはようございます、富田さん。新規住人の登録を…。」

富田さんは30代後半の元ホテルウーマンだ。富田さんは加瀨の姿を認めると、少し微笑んだ。

私は、富田さんの差し出した住居人新規登録用紙を受け取ると

「加瀨、これに名前書いて~。必要なの。」

加瀨は微笑みながら用紙を書き込み始めた。富田さんと目が合うと優しく微笑まれた。何だか恥ずかしい…。富田さんは書き終えた加瀨の用紙を見て更に笑みを深めた。

「加瀨様ですね、富田と申します。宜しくお願い致します。」

加瀨はまた45度の綺麗なお辞儀をした。

「こちらこそ宜しくお願い致します。」

「富田さんお買い物に出てきます。」

「はい、行ってらっしゃいませ。」

私はエントランスから外へ出ると、マンションの横の半地下になっている駐車場を指さした。

「ここが駐車場ね~駐車番号は1と2。どっち使ってもらってもいいからね。これがマンションの門のオートロックキー、車の中からでも門に向かって発射してたら門が開くよ。」

「発射って…。」

私がそう言って門扉に近づいてエイッ!とロックキーを門扉の辺りに向けると、門扉が自動でゆっくり開いていく。門扉を抜けると、加瀨にロックキーを渡した。

「これ忘れずに持ち歩いててね。忘れててもコンシェルジュのインターホン鳴らせば開けてくれるけど、手間だからね。」

「了解!」

さてさて加瀨の車に乗せてもらおうかな~まさかのスポーツカーとかじゃないだろうね?

車高の低い車は圧があるようで好きじゃないんだけど?

うちのマンションから少し歩いた所に停めてあった加瀨の車は濃いブラウン色の車体が丸みのある女子っぽい車だった。おしゃれ!

「女子力高っ!」

「どういう意味だ!」

私は女子力の高い加瀨の車で少し遠方のショッピングモールに向かうことになった。