「帰る」

早見君はそう言って踵をかえそうとするも、すかさず姫ちゃんが呼びとめる。

「なんだ、おまえ、心霊研究と聞いてビビったのか」

明らかな挑発だよ。そんな挑発にクールな早見君が乗るとも思えないのだけれど。

「はあ、怖いわけないだろうが」

その言葉を聞いて姫ちゃんがニヤリと笑った。

「そうだよな、おまえが心霊なんか怖がるわけないよな。なら一緒にきてもいいだろう?」

「ああ、かまわない。何のようかしらないが付き合ってやるよ」

なんか、姫ちゃん、早見君の扱いなれてるなぁ。似た者同士なのかな。

わたしは部室のドアをゆっくり開けた。どんな人がいるんだろう

「失礼します」

ドアを開けると、部室の片隅に文庫本を読んでいる女生徒が一人いた。サラサラのストレートヘアのロング。目鼻立ちがくっきりしていて、どこか冷たい感じがする。

「何か用かしら?」

読んでいた文庫本を机の上に置いて、その女生徒はそう言った。顔をあげたその女生徒は凄い綺麗な人だった。儚さのある感じがして。