わたしは姫ちゃんに幽霊は見当たらないと告げると、姫ちゃんは胸を撫で下ろした。それから姫ちゃんは少し姿勢をただした。

「なあ、千鳥、これは色んな意味でわたしの手におえないぞ」

「そうだよね」

姫ちゃんは霊媒師じゃないもんね。手におえなくて当たり前だよ。

「いいんだよ、姫ちゃんにわたしが独り言をぶつぶつ言ってる変人じゃないことがわかってもらえたら」

それが目的なんだから。姫ちゃんは顎に拳を押し付けて色々考え込んでいる。

「そうだな、香りさんってなんで成仏しないのか聞いたのか?」

「聞いたよ、でもわからないんだって。名前の香りって以外は記憶が曖昧なんだって、ただ、」わたしがいいかけると、姫ちゃんが「ただなんだ?」と、割ってはいる。

「うん、わたしと初めて会ったのはあの自動販売機なんだって。」

「あの自動販売機か」

姫ちゃんはあのラブホ街を思いだしてあからさまに嫌な顔をした。