うぅ、慌てて着替える。鏡で自分の姿も見る暇が無かった事が悔しい。

「姫ちゃん、急いで着替えたからどこか皺になってない?」

姫ちゃんに袖や後ろ姿を見せるも姫ちゃんは「はぁー、そんなことどうでもいいから、走れ」すこしだけ低いかすれ声で言った。

「どうでもいいってひどいよ」

「ああ、もう鬱陶しい」

姫ちゃんは綺麗な長い髪をぼりぼりかきむしる。そう言いながらも姫ちゃんはわたしの走るペースに合わせてくれる。ほんと大好きだよ。姫ちゃん。

わたしは思わず姫ちゃんに抱きついた。首元に腕をまわして。姫ちゃんは頬から耳を真っ赤にしている。

「は、恥ずかしいだろ、離れろ」

そう言いながらわたしを振り払おうと体をじたばたさした。わたしは振り払われないように力一杯抱きしめる。

姫ちゃんはうぅっうぅと声を漏らしわたしの腕に二回タップして、「殺す気か」と言った。