姫ちゃんが心配そうな顔をしている。黙々と駅に向かっている。俯いていた姫ちゃんが顔をあげる。わたしを真っ直ぐ見つめる。重い口を開くように姫ちゃんは言う。

「さっきから、千鳥は誰と話しているんだ?」

小声で話してたつもりだったのに聞こえてたの?そんな可哀想な子を見る目で見ないでー。やんごとなき理由があるんだよ。決して独り言なんかじゃないんだよ。姫ちゃんからしてみれば独り言にしか聞こえないよね、このままじゃわたし、痛い子じゃん。

わたしは原因である香りさんを睨み付けた。香りさんはざまあみろって顔でわたしをみて楽しんでいる様子。悔しいよ。姫ちゃんに洗いざらい説明して信じてくれるかなぁ。例え信じてくれたとして、幽霊がついてるわたしから離れたりしないかなぁ。

「悩みどころだねぇ」

香りさんが言った。ほんとそうだよ。でも今、香りさんに応えるわけにもいかない。また心配させてしまう。