脇道を一点に見つめて「わたし、千鳥に会ったのここだわ」

そう言うと香りさんは一人で脇道に入る。そして自動販売機付近で止まるとわたしに向かって大きく手をふった。

「おおい、おおい、千鳥、ここだ、ここ」

大声でわたしを呼ぶ。香りさん、無邪気にわたしを呼んでもわたしはそこにはいけないからね。わたしは今、姫ちゃんと二人で登校してるんだから、そのこと理解してね。

どうも香りさんは自分がわたしにしか見えてないことを理解していない節があるなぁ。

案の定、香りさんは戻ってくるなり文句を言ってきた。

「おい、呼んでいるだろう、なんでこないんだよ」

「あのね、香りさん、香りさんはわたしにしか見えてないんだよ、そこのところわかってる?」

ちょっときつく言い過ぎたかな、香りさんは黙ってしまった。そのかわりに姫ちゃんが怪訝な顔をしている。少し声がでかかったかな。