「そっか、良かった…」


そう言うと、少し夜風が吹いて、私はなびいた髪を左手で耳にかける。


ふと、左にいる小林くんが静かなことに気づき、見ると目が合った。


「え……なに?」


「あー…いや?」


「そう…」


もしかして、私のこと見てた?
…なわけないか。


そして鞄を肩にかけ、私は立ち上がる。


「呼び止めてごめんっ、ありがとう」


「あぁ…別に、驚いたけどな」


そう言って小林くんも立ち上がる。


「じゃぁ、今度こそ…おやすみ」


「うん…おやすみ」


そして再度私は小林くんに背を向けて、アパートまで歩きだした。


誰かが私のこと、そんな風に想ってくれてたなんて、嬉しかった。


ただ、素直に嬉しかった。


思い出を整理するのも、いいのかもしれない…。


そうだよね?


古田…。