この日私は夢を見ていた。
私が幼い頃に大好きだった彼のことを。

「皐月ちゃん、そろそろ学校行く時間よ」

自室のベッドで寝ていた私を起こしたのは母の和代だった。

ゆっくりと身体を起こした私は制服に着替えるとそのまま部屋を出て母のいるリビングへ向かった。

廊下を進みリビングに繋がる扉を開けた私は

「おはよう、お母さん」

その声に反応した母は朝食の準備が丁度整ったみたいで、

「あら皐月ちゃん、おはよう。ご飯出来てるから座って待っててね」

と優しげな声で応えた。

うん、と返事をした私は朝食が並んでいるテーブルに向かい椅子に腰掛けた。

お味噌汁や目玉焼き、ポテトサラダ等朝から豪勢な朝食に毎回驚きながらも母が飲み物とグラスを持って、私が座っている向かい側の椅子に座ると

「それじゃ、いただきます」

と言って私達は朝食を食べはじめた。

お互いに無言で朝食を食べていると、いつもとなにか違うと感じた母は

「どうしたの?どこか体調でも悪いの?」

と心配そうに声をかけてきた。

「ううん、違うよ!」