ホームズの子孫には敵わない

私の予想通りのことを言い、モリアーティは私に近づく。私はびくりと肩を震わせる。相手は人を殺したことのある殺人鬼だ。

「恐れなくてもいいんですよ?」

怯える私に、モリアーティは驚くほど穏やかな笑みを浮かべる。そして私と目線を合わせた。

「私自身は、人を殺したりはしていません。私はチームの中心であり頭脳。私が罪に手を染める必要はない」

「……いいえ、あなたは犯罪者です。ホームズさんたちがそれを必ず見つけます!」

不敵に笑うモリアーティに苛立ち、私は気付けば声を荒げていた。結束バンドを外そうとして手首が痛む。

「ハハッ。言う時は言うんですね」

モリアーティは、ゲームを楽しむように笑う。それが私をますます苛立たせた。

「とりあえず私たちは部屋から出ますが、あなたにはここにいてもらいますね。お客様のおもてなしの準備をしないと」

モリアーティは男性を連れ、部屋を出て行く。それと同時に鍵がかけられ、私は密室の中に閉じ込められた。