何年も昔の事。

あれは確か彼女、《水無瀬 陽(みなせ はる)》がまだ小学五年生の頃。

母親が再婚し、新しい父親ができ、至って平々凡々な毎日を過ごしてた。

一人娘の陽にとことん甘い父だった。

あれが欲しい、これが欲しいと陽が言えば何でも買ってくれるような人だった。


そして陽の人生に大きく関わるとも言える事件が起きた。


夜中に何か生々しい水音が隣の両親の部屋から聞こえてきたのだ。

小学五年生の陽には大方予想がついていたはず。にも関わらず陽は両親の部屋へ足を運び、ドアを開けてしまった。

そこには裸の両親。母は父の上へ跨っていた。

両親は急いで布団をかぶった。

陽は気が動転し泣きながら部屋へ戻った。

恐らく自分の母が一人の女に見え、自分の眼前に広がる行為に酷い恐怖を感じたのだ。

少しして母が服を着て陽の部屋へ入り、泣きじゃくっている陽に言い訳をしだした。

「ごめんね、ママ達暑くて服脱いでたんだ。ついでにパパが腰痛いって言うから湿布貼ってたんだ。ビックリしたよね、ごめんね。」

と、陽の頭を撫でながら言ってきた。

暫くして陽は大丈夫だから、と言い母を部屋から追い出し、泣き疲れてそのまま寝てしまった。