「希里!いつまで寝てるの、起きなさい!」

……朝だ。
鳴り響く目覚ましと母親の声で目が覚める。

「んー、眠い…。」
「今日から新学期でしょ。受験生になるんだからもっとしっかりしなさいよ~?」

そうだ、今年で私は中学3年生。
今日は…始業式。
……ん?始業式???

「あ゛っ!!!今何時っ?!」

時計の針は7時を指していた。

「げ、真奈たちに怒られる。」

真奈、宏樹、優太と私、希里は幼なじみである。
毎朝、一緒に登校しているのだが…

「おーい、遅刻常習犯!」
「新学期も絶好調だなあ」
「おいてっちゃうよ~」

窓の外から聞き慣れた声がした。

「うわ、もうみんないる?!」

私は急いでパジャマを脱ぎ捨て制服の袖に手を通した。

「お母さん!パン!パン焼いて!!」
「はいはい~、わかったわよ。」

急ぐ気のない母親にはらはらしながら焼きたてのパンを片手にバックを掴んで家を飛び出した。

「いってきます!」

「おそーい。」
「ごめん!」

朝が弱い私はいつも3人に迷惑をかけてしまう。
申し訳ないと思いつつもやっぱり朝は起きられない。

「は、あんたパン持ってきたの?」

真奈が怪訝そうな顔をした。

「あはは、だってお腹減るじゃん。」

当たり前のことのように答える私に

「さっ、行こうか。」

と、苦笑しながら宏樹が声をかけた。

「いつになったら希里は起きられるようになるのかな~?将来が不安だよ。」

真奈はおどけながらそう言った。

「うぅ…努力はする。」

私は新学期こそ頑張ろうと思っていたのだが、母親に起こされるまで目覚ましが鳴っていることにさえ気が付かなかった。

「まあいいじゃんか。それでこそ希里だし。」

優太がフォローしてるのか馬鹿にしてるのかよく分からないようなことを言ってきた。

「酷いなあ。」

私が頬を膨らませると、優太は笑って

「フォローしてやったんだから感謝しろよな!」

と言った。
あ、フォローだったのか。
てっきり馬鹿にしてるのかと思った。

そんな会話をしながら歩いているといつの間にか学校に着いた。

「「「「うわあ…」」」」

そこには桜咲き誇っていた。

「去年はもっと遅かったよね、桜咲くの。」

宏樹が呟いた。

「3年目だけど始業式に桜咲いてるのって珍しいよね。」

真奈も隣で頷いている。
そう、ここの地方は気候の問題もあり入学式や始業式に桜が咲いているの稀だ。

「なんかいい1年になりそうだな!」

優太が笑ってそう言った。
それから、4人でまた歩き出した。