ひんやりと冷たい水が八分目まで入った紙コップを受け取って思わず呟くと、ハヅキが少し驚いたように目を見開いた。
「…は?」
「いつもよりも優しい。わかりやすく優しい。いつもそうだったらいいのに」
熱のせいか頭がフワフワする。
深く考えられなくて、思ったことがそのまま口から零れた。
「…ふーん」
クイッと器用に右の口角だけわずかに上げたハヅキの感情はわかりにくい。
「そっか、ヤサシー男が好きなんだもんね?さぁちゃんは」
「そうだよ。優しい方がいいに決まってるじゃん…」
優しい人か、優しくない人かでいったら、前者の方がいいに決まってる。
「決まってる、ね…」
私の言葉を繰り返したハヅキの声はひどく平坦で。
「じゃぁ優しくしたら
――好きになってくれんの?」



