「そうだねー。でもあーさ、遊んでくれないでしょ?」恨めしげに有紗を見る。
「まー夏休みは練習根詰めだからなー。ふだんなかなか会えないぶん、彼氏ともいっぱいデートしたいし。ま、でも1ヶ月以上あるんだし、どっかで買い物でもいこうよ。」
「うん。私は暇だし、バイトすることにした。」
「へぇ。ゆうバイトするの?どこで?」
「笹野町のコンビニ。」
途端、有紗が前のめりになって吹き出した。
「え、笹野町って、終点の?めっちゃ田舎なんじゃん?行ったことないけど。」

有紗は他の地域からの電車通学なため、学校の最寄駅を通過して五駅後に辿り着くその場所を知らないのだった。

「んー。同じ高校の子とかに見られたくなくてさー。まぁあっち方面から来てる子もいるかもだけど、とりあえず都心よりはいいかなって。」

「へぇ、いつか部活終わり見に行ってみよっかなぁ〜。」
「やめてー。コンビニでバイトしてる姿とか見られたくない。」
「ふはは。まぁ、がんばりなよ。」
そう言ってにこっと、白い歯を見せて笑う有紗は、やっぱりとびきりに可愛かった。