「あの翌日、夏瑛がいなくなったアトリエは荒れ地みたいに寒々しかったんだ。一緒にいたときは、光で満ちあふれていたのに。夏瑛が自分にとってどれだけ大切な存在だったか、そのときようやく気づいた」


 靭也はゆっくりと歩みを進め、夏瑛のほうに近づいてくる。


「しょうもない奴だよな、おれも。夏瑛と過ごしたキラキラした毎日が懐かしくて、何としても

取り戻したくなった。頭の中に夏瑛のいろいろな表情が浮かんできたよ、会わなくなってから毎

日。笑ってたり、すねてたり、思いつめておれを見つめていたり……。でもその顔がみんな泣き

顔に変わっていくんだ。悔やんだよ。どうして夏瑛を泣かせたんだろう。どうして夏瑛の気持ち

を受け止めてやれなかったんだろうって。すぐにでも会いに行きたかった。でも、いくら言葉を

尽くしたところで、この気持ちはうまく伝えられない気がしたんだ」

「でも、靭にいちゃんは貴子さんが……あの絵だって……」

「知ってたのか」

 夏瑛はこくんと頷いた。