大きさや技法もさまざまな作品が、所狭しと壁面を埋めている。

 足早にそれらの前を通りすぎ目的の絵を探す。

 早く、早く。気が急いて足がもつれそうになる。

 三つ目の部屋に入ったとき、後ろ姿の靭也が目に入ってきた。

 ずっとアトリエで見ていた懐かしい背中が、すぐ目の前にある。

 夏瑛は凍えきっていた身体が息を吹き返していくのを感じた。
 
 靭也はゆっくりと向きなおって、言った。

「待ってたよ、祈るような気持ちだった。ハガキを出してから、ずっと」

 静かな口調だった。

「……どうして?」

 すっかり息が上がっていた夏瑛は、なんとか一言だけ声を発した。

 靭也は乱れ髪の夏瑛を見つめたまま、口を開いた。