時計を見ると、午後三時。

 ここから美術館がある上野まで1時間以上かかる。

 間に合わないかもしれない。

 何でこんな時間まで意地を張っていたんだろう。

 いまさら後悔しても遅い。

 とにかく駅まで、傘もささずに走り続けた。

 今日会わなかったら、もう一生会えないんじゃないか、そう思うと空恐ろしくなった。

 自分には無理だ。靭にいちゃんと会わないことなんてできない。

 駅に着いても、まだ雪は降りつづいていた。

 あまりの寒さに、普段の日曜であれば大勢の人でにぎわっている美術館周辺の公園も人影はまばら。

 その中を夏瑛はひたすら走った。

 寒そうに立っている土産物売りのおじさんが変な顔をしているようだったが、気にしている暇はなかった。

 もうすぐ美術館が閉まってしまう。


 「あと5分で閉館ですよ」明らかに迷惑そうな係員を無視して会場へ急いだ。