一目でわかった。少し右上がりの几帳面な文字。靭也だ。

 公募展の案内状だった。

 そういえば、叔父から、靭也が入選したことは聞いていた。

 ――もしできれば、来てほしい。今度の日曜日に

 ハガキにはそう一言添えてあった。

 どうして? 失恋から立ち直りかけていたときだったのに、当の本人からハガキが届くなんて……

 でも、いまさら。

 そのときは嬉しい気持ちより戸惑う気持ちのほうが勝った。

 もうこれ以上傷つきたくない。

 ビリビリに破いてゴミ箱に捨てようと思った。

 けれど……できなかった。

 どっちつかずの気持ちを抱えたまま、結局、そのハガキを勉強デスクの片隅に積んである参考書の下に隠すように挟んだ。