「え?皆が霊感がある訳じゃないのか?」

「いや、それはさすがに……」

俺の言葉に、陽太は苦笑した。

「それもそうか……多分、あの悪霊が強すぎたから、見えるようになっただけだろ」

俺が答えると、紡は「皆の霊感は、ずっとこのまま……」と呟く。

「いや、もともと霊感が無い人は、そのまま消えていくはずだ。そうだ……将宏、色々と聞きたいんだが、良いか?」

俺が問いかけると、将宏はしまったと言いたげな顔を俺に見せ、ゆっくりと頷いた。

「なぜ俺の髪飾りやブレスレットを盗んで、生徒指導の先生に渡したんだ?」

「……軽はずみで……」

将宏は、小さくなって答える。

「俺の手元に髪飾りとブレスレットがあれば、今回の件は防げたかもな。とりあえず、先生も心配してるから帰るぞ。陽太、ありがとな」

俺は、皆に微笑んで歩き始めた。



あれから数日。俺は、クラスメイトの皆とさらに距離が縮まったような気がする。

将宏は、生徒指導の先生にたっぷりと叱られ、謹慎処分をくらったそうだ。

また、俺が感じていた視線は将宏のものではなかった。……ということは、あの悪霊か……。あと、将宏が俺を見て笑ったのは、生徒指導の先生にアクセサリーを渡してやろうと思ったからなんだと。