「一華さん、大丈夫?」

ハンカチで目元を押さえ肩で息をする私に、白川さんがコーヒーを差し出した。

「ありがとうございます。もう、大丈夫です」

紙コップに入ったコーヒーをいただきやっと落ち着いた。

「このジェットコースターって、一見しょぼそうに見えるからみんな油断するんだよ。絶叫系の最新タイプとは別の意味で怖いのに」

どうやら、白川さんは私の反応を予想していたらしい。
まんまと乗せられたようで、気分が悪い。

「私を泣かせたくて、ここに来たんですか?」
意地悪な言い方をしてしまった。

「そうかもね」
「え?」
「一華さんの素顔を見てみたかった」

私の素顔って。

「意地悪ですね」

要は私を困らせたかっただけじゃない。

「素直じゃない一華さんにお仕置きってとこかな?」
「はあ?」
一瞬で顔が赤くなった。

何なのこの人。
私は拳を握りしめて立ち上がった。

「結婚する気もないのにお見合いして、バカなお嬢さんのフリして」
「結婚する気もないのに、お見合いしたのは白川さんも一緒じゃないですか?」
被せ気味に、言い返した。

「そうだね。でも、一華さんから連絡がなければ、この話はなかったことになるはずだった」
うっ。
「どんな心境の変化で、『また会いたい』なんて誘ってもらったのかなあ?」
「それは・・・」
「僕に興味がわいた?」
「いいえ」
全く。
ちっとも。

「じゃあどうして?」
「・・・.白川さんだって、その気がないなら断ってくれれば良かったじゃないですか?」
「俺のせい?」
ううっ。

やっぱり白川さんは苦手だ。
話せば話すだけペースを握られてしまう。

「それで、今日僕を誘ってくれた理由は?」
ちょっとだけ、白川さんの口調がきつくなった