白川さんが連れてきてくれたのは公園に隣接した小さな遊園地。
私も小さい頃何度か来た覚えがあるところ。
コーヒーカップやメリーゴーランド、バイキングと観覧車。あとは・・・小さなジェットコースター。しかし、ジェットコースターとは言っても横回転も縦回転もしない一昔前のもの。
それでも、子供の頃来たときには随分広い遊園地だと思ったけれど、大人になってみると手狭な感じ。

「懐かしいなあ」
つい口にしていた。

「やっぱり?」
え?
「美園幼稚園の遠足っていつもここだったじゃない」
えええ?

美園幼稚園は都内の有名私立幼稚園。とは言っても受験勉強オンリーってわけでもなく、躾にもマナーにもうるさいミッション系の幼稚園。
兄も私もそこに通っていた。

「ど、どうして?」

何で白川さんが知っているの?もしかして・・・

「そう。僕も美園幼稚園に通っていました」

へー。

「もしかして、私のことを覚えてるんですか?」

申し訳ないけれど、私に当時の記憶はない。

「残念だけれど、記憶はない。ただ、渡された釣書を見て気づいたんだ」

ああ、お見合いの釣書。私は全く見ていなかった。

「さあ、どれに乗る?」
「えー、どれでも・・・」

どう見ても絶叫系はなさそうだし、どれも安心して乗れそう。