「お前、俺を試してる?」
「えっ、そんなこと」
ないよ。と言いかけた唇を塞がれた。

何で?
どうしてこんな事をするんだろう。
好きでも何でもないはずなのに。

唇の隙間から高田が入ってくると、私はもう何もできなくなった。

やめて・・・でも、やめないで・・・お願い。

しつこくて情熱的なその動きは、欲情さえ感じる。
でも、目の前にいるのは同僚高田鷹文。
それ以上でも、以下でもない。

「俺はこれ以上の忍耐力はない。お前が泊っていくなら、きっと手を出すと思う。それでもいいか?」
「・・・」

「もちろん、いい加減な気持ちで関係を持つつもりはない。まあ、1度は弾みでやってしまったけれど」
「もう、そのことは」
言わないでを高田を見た。

「お前に、それだけの覚悟があるのか?それが聞きたい」

まるで会社で説教されているみたい。
とても男女の会話とは思えない。
高田は私のことを知らないはずなのに。

「それとも、本気で俺のものになってみるか?」
「・・・高田」

今、目の前にいる男は誰だろう。
私の知っている同僚とは違う。

これ以上はダメ。私の本能がそう言った。
彼を私の人生に巻き込むわけにはいかない。

「ごめん、夕食を食べたら帰る」
「ああ、出前を取ろう。寿司でもウナギでも何でもいいぞ」
「うん」

結局ウナギの特上をご馳走になり、明日の朝は私の車で迎えに来るからと約束をして、マンションを後にした。