「ここでいいの?」
「ああ」

やって来たのは車で20分ほど走った場所。
3階立ての建物に、『三鷹整形外科』と書かれていた。

「そこを曲がると時間外の入り口があるから、そっちにつけて」
「ああ、うん」

車の中から何度か電話を入れていた高田。
車が時間外入り口に着くと車いすを持った男性が待っていた。

「久しぶりだな、鷹文くん」
「ええ。ご無沙汰してます」

男性の手伝いで車いすに移りながら、親しげに挨拶を交わしている。

「あの・・・」
「ああ、僕は彼の主治医で三鷹信吾と言います」
「はあ」

三鷹整形外科の三鷹信吾さんは、50代後半くらいに見えるおじさま。
チラッと見えた名札には、『医院長 三鷹信吾』と書いてある。

「鈴木ありがとう。もういいよ」
「もういいって、どうやって帰る気なのよ。私は待ってるから」
「いいから。お前も仕事があるだろう?俺はなんとかするから帰れ」
「いいよ。急ぎの仕事はかたづけてきたし」
「しかし・・・」
「いいから行ってきて」

高田を送り出し、私は待合の休憩スペースでパソコンを広げ伝票や書類の作成を片付けた。


それから1時間ほどし診察室から出てきた高田は、自分の足で歩いていた。

「大丈夫なの?」
「ああ、骨に異常はなかった」
「そう」
良かった。

「鷹文くん。強い薬で痛みは抑えているけれど、油断するんじゃないぞ。1週間はできるだけ歩かないこと。痛み止めは一日3回まで。いいね?」

「はい」
思わず私が返事をしてしまい、三鷹先生に笑われた。