「触るよ」
「ああ」

冷凍庫に入っていた氷枕を、薄いタオルにくるんでから右足にあてがった。

「ん?」
何をしているんだと高田が目を開けた。

「大丈夫?冷た過ぎた?」
「いや、でも、それって頭に使うものだろう?」
「そうだけど、いいじゃない。役に立って本望だって氷枕も言っているわ」
「んな訳あるか」
少しだけ口元を緩ませた高田に、なぜだかホッとした。

大きめのタオルで氷枕と足を固定し、私は自分用に買ってきたサンドイッチとおにぎりをテーブルに広げた。

「どうせ食べてないんでしょう?少しでも食べないと。病気じゃないんだからおかゆの必要ないわよね?」
どれ食べる?と両手に持ってみせると、だるそうにサンドイッチを指さした。

「ペットボトルのお茶を買ってきたけれど、それでいい?コーヒー入れようか?」
「いいよ。それより・・・」
ん?
何か言いたそうな顔。

「何?」
「あの・・・」
「何よ、どうしたの?」

「・・・トイレに行きたいんだ。悪いけれど、廊下まで肩を貸してくれないか?」

トイレって・・・。
つい、顔が赤くなってしまった。

「すまない」
申し訳なさそうにうつむく。

「バカ、何言ってるのよ。ほら、手を貸すから。立てる?」
「ああ」

体を動かすたびに顔をゆがめ、苦しそうにする高田。
私は腕をとり体を支えた。

「大丈夫?ゆっくりでいいから」
「ああ。うぅっ」
時々、うめくような声が聞こえる。

高田はどうしたんだろう。これはただ事ではない。

「ありがとう、ここでいい。後は1人で行けるから」
廊下に出たところで、手を離された。

「でも・・・」

1度とは言え、体を重ねてしまった私達。
今さら遠慮なんてないと思うけれど、口には出せない。