「ほら、食べられそうなものがあれば言って」
テーブルの上に並べて見せる。

「今はいい」
高田はソファーに寝転んだまま目だけ開いた。

「ダメだよ。熱は?」
「ない」
「嘘、計ってないでしょう?」

高田のことだから、薬も飲んでない気がする。

「ねえ、薬は飲んだの?」
一向に反応しない高田に、つい声が大きくなった。

「うるさいなあ」
「はあ?」

うるさいって何よ。私は心配しているのに。

「なあ」
ん?
「風邪じゃないぞ」
「へ?」
「そもそも病気ではない」
はあ?
「じゃあ何よ」
「それは・・・」

一瞬ためらったように黙った後
「足が、痛いんだ」
ボソッと呟いた。

足?思わず目が行った。
短パンTシャツ姿の高田。
確かに、右足の膝から下が腫れている。それに・・・すごく大きな傷跡。

「それって・・・」
「聞くな」
拒絶された。

気にはなる。けれど、話たくないなら聞こうとは思わない。
でもね、高田が動けなくなるほど辛いってよっぽどのこと。
この状況を何とかしなくちゃと、私も考えを巡らせた。

「足、冷やす?氷持ってこようか?」
「・・・ああ」
目を閉じたまま返事だけが返ってきた。