ピンポーン。

足を運んだのは、都心の高層マンション。
普通のサラリーマンでは住めるはずもないところ。

私は昼休みを犠牲にしてここの住人に会いに来た。

ピンポーン。ピンポーン。
何度か鳴らして、

「はい」
不機嫌そうな声がやっと聞こえてきた。

「鈴木です」
「何だ?」
「何だって、お見舞いよ」

何なの。どうして高田が不機嫌なわけ?

「大丈夫だと言ったはずだが?」
「いいから開けて。見舞いに来た同僚をこのまま帰すって、ないでしょう?」


カチャ。
音がしてやっとエントランスの中に入ることができた。

エレベーターで向かうのは45階。
すでに2度ほど来ているとは言え、酔いつぶれていたり、体調不良だったりでまともな記憶がない。

「それにしても高そうなマンションね」


ガチャッ。
「どうぞ」と声がして、
「お邪魔します」
私は勝手に上がらせてもらった。

声はすれど、一向に高田の姿は見えない。
玄関に出ることもできないほど具合が悪いって事?
不安だな。

「こんにちは」
恐る恐るリビングに入ると、
「悪い、横にならせてもらうから」
ソファーに倒れ込んだ高田が目に入った。

「どうしたの?そんなに悪いの?」
「大丈夫だ」

ちっともそうは聞こえない。

「風邪なの?熱は?薬は飲んだ?」

こんなときはプリンやゼリーなど喉ごしの良いものと、スポーツ飲料、後はリンゴと、レトルトのおかゆ。もちろん冷却シートも買ってきた。