「よしっ、これからお前達は俺の部下だから、高田、鈴木って呼ぶぞ」
課長の目が突然鋭くなった。

「たとえ女だろうと」
そう言って私を見る。
「たとえ」
今度は高田を見て
「・・・だろうと」
小さな声で私には聞こえなかった。
「俺の部下になった以上は遠慮しない。お前達を一人前に育ててやるから俺に着いてこい。いいな?」
「「・・・」」
予想外な体育会系ののりに、黙ってしまった私達。

「返事っ」
「「はい」」
それが高田との出会いだった。


あの日から、森課長には本当にお世話になった。
大学時代ラグビー部だった課長はいつもパワフルで、「もっとできる、頑張れ」と励ましてくれた。
失敗して雷を落とされたことも何度かあったけれど、私は森課長が好きだった。
その気持ちは高田も一緒だと思う。
2年後、栄転でアメリカ支社に行くことになった課長に「行かないでくださーい」と泣きついたっけ。

あの頃が一番幸せだったなあ。