こんな日に限って激務だったりする。

すんなりいくはずの取引先もちっちゃなトラブルがあったり、担当者が不在だったり、満員の電車移動で延々立つ事になったり。

結局昼食もとれず最後の取引先を訪問し終わったときには、私の意識がもうろうとしていた。
とにかく会社に戻らないと、その思いだけでタクシーに乗り込んだ。

本当は電車での移動予定だったんだけれど、さすがに今は無理。
自腹覚悟でタクシーに乗った。

「ハー、疲れた」

ここまで疲労感を感じたのは初めて。
まあ、熱があるみたいだから、仕方ないか。
会社に風邪薬を置いていたかなあ?
本当ならこのまま家に帰りたいんだけれど。
急ぎの伝表も起こさないといけないし、書類の作成もその日のうちに終わらせたい。
結局、無理をするしかない。


「お客さん」
いつの間にか眠ってしまっていた私は、運転手さんに起こされた。
「ああ、ごめんなさい。ありがとうございます」
慌てて支払いをし、タクシーを降りた。


渋滞に巻き込まれたせいもあって会社に戻ったのは午後7時。
その時点ではまだ数人が残業で残っていた。
けれど、いつの間にか消えていき、気がつけば私1人になった。

ああ、まずいなあ。
頭がガンガンしてきた。
それに、寒気もする。

とりあえず、デスクにおいていた私と可憐ちゃんの膝掛けを体に掛けて仕事を急いだ。

あと少し。
これだけ終われば、帰れる。
独り言のように呟きながら、気力を振り絞った。


「はあー、終わった」

やっと片付いた時、時刻は11時を回っていた。
体調が悪いせいか、随分と時間がかかってしまった。

さあ、帰ろう。
そう思って椅子から立ち上がろうとした瞬間、
ガタンッ。
崩れるように、膝から倒れた。

ダメだよ。
もう少し頑張って、家まで帰らないといけないのに。
わかっているのに、体が動かない。

火照った顔にオフィスの床が気持ちいい。

その場から動けなくなった私は
「ちょっとだけ休めば楽になるから」と言い訳して、そのまま目を閉じた。