兄さんが尽力したせいか、三和物産の件はすんなり収まった。
誰も処分されることもなく、話題からも消えていった。
ああこれで終わった。
やっと安心したとき、
「ちょっと来い」昼休みになった途端腕をとられ、強引に連れて行かれた屋上。

目の前に、怖い顔をした高田がいた。

「何?どうしたの?」
「白々しい。自分の胸に手を当ててよく考えろ」
「高田?」

こんなに怒った姿は初めてかも。

「俺は、これ以上何もするなって言ったよな」
「う、うん。私は何も・・・」

兄さんがバラすはずないんだから、高田はただ怪しんでいるだけのはず。
知らないで通せばなんとかなる。

「本当に、何も知らないのか?」
「うん」
「嘘をつかれたら、信用できなくなるし。俺たちの関係も終わるんだぞ」

俺たちの関係って・・・恋人でもあるまいし。

「もう一度聞く、お前何をした?」
「何も・・・して・・ない」

ギロッと、高田の目が鋭くなった。
もしかして気づかれた?そんなはずはない。
でも、確証もなくこんな怒り方をする人じゃない。

「お前がそんな態度なら、俺もそのつもりで付き合うぞ」
「高田・・・」

嘘をついているのも、言いつけを守らなかったのも私。そんなことは百も承知。
でも、私のせいで誰かが処分されるなんて我慢できなかった。

「最後だ。お前、何をした?」
「私は何も・・・」
自分の声が震えているのがわかった。

親指をギュッと握りしめる。
そうしていなければ、泣きそうだった。

「もういい」
高田はプイと背を向けた。

「しばらく、仕事以外では話しかけるな」
最後まで怒ったまま、高田は消えていった。

これって絶交宣言?

この日から、高田の態度は冷たくなった。
可憐ちゃんが心配してしまうくらい、あからさまに嫌われてしまった。