「見られたらまずいわね」
「やっぱり。どうしましょう一華さん」
可憐ちゃんが半べそをかいている。

困ったわねえ。

「もう先方には着いたの?」
「たぶん今日の昼には着くと思います」

うーん。

こんなとき、社会人としての正しい行動は下手に隠そうとせずに、すべてを上司に話す事。
私にだってわかっている。でも、可憐ちゃんがかわいそうで、できなかった。
それに、三和物産は去年まで私が担当していた会社。
担当者だって気心が知れている。今ならなんとかなるかも。そう考えてしまった。

「わかった。三和物産の担当に連絡してみるから。可憐ちゃんはもう一度三和商事に見積もりを送ってくれる?」

「はい。一華さん、ありがとうございます」
うれしそうに駆けていく可憐ちゃん。

私はすぐに三和物産に電話をし、今日届いた郵送物を回収に行くと伝えた。


何年も一緒に仕事をしてきた担当者は、快く了解してくれ回収する事ができた。
ただ1つ気になったのは、郵送物が開封されてしまっていた事。
「会社に届いた時点ですべて中身を確認するので」と言われ仕方ないと思ったけれど、一抹の不安が残った。