「しばらく接待には行かせないからな」
「はあ?それじゃあ仕事にならないし」
「当分はサブでつけ」

はああ、冗談でしょ?
今さら後輩のサブなんて、

「イヤよ。今の取引先はずっと私が担当してきてるの。今さら後輩になんて譲れない」
「お前がなんと言おうと、接待には出さない。それで仕事にならないなら、サブに回るか異動願いを出すんだな」
「異動って」

私は高田の顔を真っ直ぐに見た。

「高田、本気で言ってるの?」
嘘だよね。
「俺は本気だ」

・・・。
目の前がかすみだした。

「何で?」
涙声にならないよう、小さな声でボソッと呟いた。

私はこれからも高田と仕事がしたいのに。高田となら、何かできそうな気がするのに。辛くても苦しくても、一緒に頑張れると思ったのに。

「二度とあんな目に遭わせない」
苦しそうで、悲しそうな声。

すごく心配してくれたんだと、今気づいた。

「・・・ごめんなさい」
「これから用心してくれ」
「はい」

高田はすっかり上司の顔に戻っている。

「だから、異動なんて言わないで」
私にしては珍しくかわいい事を言ったのに、返事は聞こえてこなかった。

その後もビールを飲み、夕暮れ前に酔っぱらい2人ができあがってしまった。