「じゃあ、なんで急に誘ってくれたの?6年で11520時間も一緒にいながら仕事以外では一度も誘われたことなんてなかったのに」
どうしてなの?と、顔を上げた。

「それは・・・」
チラッと視線をそらしゴクリとビールを飲む高田。

「何よ、はっきり言って」

今の反応で、恋愛感情からではないのはわかった。
じゃあなぜ?

「この間の接待に責任を感じている。防げなかったのは俺の責任だ。すまなかった」
え?
「・・・いいよ」
私の不注意だし。
大事にはいたらなかったし。
相手の会社からも謝罪してもらったし。
セクハラ部長は飛ばされた。
まあ、兄さんにもばれたら仕方ないわね。

「いいわけないだろうが」
強い口調。

ん?

「お前わかってるのか?もう少しで・・・」

「フン、わかってるわよ」
私は反対を向いた。

「不用心にもほどがある」
「・・・」
「お前の頭は飾りか、あの状況の危険さは新人でもわかるぞ。本当に、バカッ」
「・・・」

さっきまで謝ってくれていたのに、今は怒っている。
本当に、意味がわからない。

クイ。
顎をつかみ目を合わされた。

「な、何するのよ」
思わず声が震えた。

いくら異性としての意識がなくても、それでも・・・

「反省が足りない」

私のドキドキなど知らんぷりで怒っている高田。
彼は上司として怒り、心配してくれているんだ。
彼らしいと言えばそれまでだけれど。ちょっと紛らわしい。
こんなだから、浮いた噂1つ聞かないのよ。