「お待たせ」
「私も今来たところだから」

スーツでない高田。初めてかもしれない。
いつも仕事の場でしか会わなかったから。
Tシャツに薄手のジャケットと綿パン。こうしてみるとまだ若いんだなあ。

「随分めかし込んでるな」

え?

確かに、膝丈のワンピースもピンヒールも高田の前では初めてかも。

「高田こそ、普段とイメージが違って誰かと思ったわよ」
「そうか?」
「うん」

私の知らない高田。
当たり前だけれど、私達はお互いの事を何も知らない。
ただの同僚なんだから。

「何か食う?」
「そうね」

そういえば、お見合いのどさくさでお昼を食べ損ねちゃった。

「ここを出たところにパンケーキの店あるぞ」
「ああ、知ってる」
.
雑誌にもよく出ていて、いつも行列のできている店。
すごいなあ、1時間も並んで食べるんだっていつも感心してみていた。
でもなあ・・・

「パンケーキ、嫌いなのか?」
「えっ、そんな事ないけれど・・・」
何か違う。

「どうした?」
トーンの落ちた私に高田の顔が寄ってくる。
「もう、近いって」
ふざけないで。

「行こうぜ」
「・・・いいよ」
「へ?どうして?パンケーキ嫌い」

うんん。
大きく首を振った。

「違うけれど・・・」
何か違う。
フルーツやクリームたっぷりのパンケーキは白川さんとなら行ったかもしれないけれど、高田と行くのは違うかな。

「高架下に串カツ屋さんがあったじゃない。あそこ行かない?」
「はあ?串カツ?」
「うん。昼飲みしたい」

きっと呆れられるって思ったけれど、

「いいぞ、行くか」
意外に高田が同意してくれて、
「うん」
私達は向かうことにした。