20分後、高田登場。

「「あっ」」
可憐ちゃんと小熊くんの声が重なった。

「お疲れ様です」
驚いている可憐ちゃん。
「・・・」
何も言わない小熊くん。

「お疲れ様」
わざとらしく小熊くんに近づく高田。

「・・・どうも」
ペこんっと頭を下げた小熊くん。

すると突然、
パシッ。
高田が頭をはたいた。

えっ。

「何するんですかっ」
当然小熊くんが声を上げる。

「挨拶くらいしろ」
高田にしては珍しく強い口調だ。

「ごめん、小熊くん今弱ってるから」
私は思わずかばってしまった。

「そんなの関係ないし。そもそもお前がかばってばかりだからこんな事になったんだろうが」
「それは・・・」
確かにそうだけれど。

「何でチーフが怒られるんですか?俺に言えばいいでしょう」
小熊くんが高田に向かって立ち上がった。

「自分の尻ぬぐいもできずに、逃出す奴に言っても無駄だ」

ギリッ。
小熊くんの奥歯を噛みしめる音。

「小熊。お前仕事投げ出して、逃げてどうするつもりだ?」
「会社を辞めます」

フン。
.高田が鼻で笑った。

「好きにしろ。でも、今日の事はきっちり部長に頭を下げろ。それもせずに逃出す事は許さない。今のところ俺はお前の上司だからな」
「俺がやめれば関係なくなります」
「それでも、今日の事はきちんとしろ。お前ができないなら、上司である鈴木に頭を下げてもらうぞ」
「はあ?何をバカな。チーフは関係ないです」
「監督責任だ」
当たり前だろうと言いたそう。

小熊くんはすごい顔で睨んでいる。

「いいか、遅刻したのも、上司にたてついたのも、仕事を放り出して逃出したのもお前だ。まずはそのことを部長に謝れ。1人でダメなら鈴木も謝るし、それでもダメなら俺が頭を下げる。俺たちはそのくらいの覚悟でいる。とにかく、明日出てこい」
「・・・」
「いいな?」
小熊くんは返事をせず、しばらくうつむいていた。

ちょっと泣きそうな顔。

「すみません、俺帰ります」
そう言うと、駆け出した。

「待って、送っていくから」
私も後を追った。