夕方、駅前の居酒屋。

「小熊」手を振って駆け寄る可憐ちゃん。

「お疲れ。あっ」
私を見て声が止った。

「ったく、何してるのよ」
私は小熊くんの向かいの席に座り、おしぼりを投げつけた。

「うわ、暴力反対」
「暴力じゃないわよ」

今時の子は、暴力だ、体罰だ、ハラスメントだと、やかましい。

「俺、もういいですから」
何も聞いてないのに、自分から言い出した。

「いいって、何が?どうするつもりなのよ?」
「会社を辞めます」

「えー、何で?」
可憐ちゃんが声を上げた。

「もう決めたから」
ビールを手に、結構あっけらかんとした顔をしている。

「何で辞めるの?」
「鈴木チーフも聞いたんじゃないですか?部長にやめろって言われたんです」
「そんなの、小熊くんだけじゃないし。みんな言われてるから」
仕事なんてそんなもの。

「もう一度頑張ってみない?」
「無理です」
即答ですか。

「せっかく頑張ってきたのに、もったいないじゃない」
「チーフや課長には申し訳ないと思いますけれど、もう決めたんです」
これ以上何も言うなとばかり、グビグビとビールを空ける小熊くん。

いつもよりもペースが速い。

その後は仕事の話には一切乗ってこなくなり、可憐ちゃんとアイドルやアニメの話で盛り上がっている。

このままではらちがあかない。
私は高田にメールした。