「へー、一華さん家のお父さんって過保護なのねえ」
「そうよ、過保護で豪腕で、もう最悪。潤さんとのお見合いだって仕事中に呼び出されて言われたんだから。私の仕事なんて仕事と思っていないのよ」
「フーン。うちはあんまりうるさく言わないから。今日だって、帰ってこなくても何も言わないと思うわ」
「そうなんだ。婚約者さんは?」

え?律也さん?

「彼も、きっと何も言わない」
そんな人だから。

「うちは、結婚したから黙っているけれど、きっとやかましく言ったと思う」
「その分今は鷹文がうるさいでしょ?」
「そうなの。今日は出張で大阪にいるからいいけれど、東京にいたら大騒ぎだったと思う。だから、今日のことは秘密にしていたの」

秘密って、
「さっきのメールでバレてるわよ」

「いいのよ。携帯の電源は切ったし。たまには心配すればいいわ」

うわ、一華さん強い。

「で、悠里さんは何で来てくれたの?」

え?

「明日、婚約者さんのご両親との食事会でしょ?」
「知っていたの?」
「うん、鷹文から聞いた」
「そう」

正直、結婚に踏み切っていいのか迷っている。
でも、明日の食事会が終われば絶対に後戻りは出来なくなる。
今が最後。

その迷いを振り切るためにここに来た。

「知り合ったばかりの私が言うのもおかしいけれど、潤さんと悠里さんはとってもお似合いだわ」
「そんなこと・・・」
最近は喧嘩ばかりなのに。

「今夜一晩ゆっくり考えてみて。もし、婚約者さんと結婚を進めるなら朝一の飛行機で帰ればいいし、踏ん切りがつかないなら、一緒に出雲大社にお参りしましょう。縁結びの神様だから良縁に巡り会うかもしれない。それで、2人で怒られましょう」

結構すごいことを言っているのに一華さんの声は明るくて、

「そうね、そうしましょう」
私も頷いた。