夜9時。
駅の改札で一華さんが待っていた。

「こんばんは、一華さん。よろしくお願いします」
「こちらこそ」

フフフ。
あんなに迷っていたのに、いざ来てしまうと迷いは消えていた。

「さあ、行きましょう?」
「はい」


一華さんがとってくれたのは本当にツインの客室だった。

「列車じゃないみたいね」

シングルのベットが横に2つ並び窓からは景色も眺められる。

「私も初めて乗るの。本当にホテルみたいね」

一華さんも驚いている。

「そうだ、一杯買い込んできたのよ」
持っていた手提げカバンから大量のお菓子が出てきた。

「すごーい。ごめんなさい、私何も準備してなくて」
「いいのよ。私が好きでやっているんだから」

みるみるうちにサイドテーブルの上はお菓子とジュースで埋まっていった。

「ねえ、写真を撮りましょう」
列車が走り出してすぐ、一華さんが携帯をとりだした。

いいけれど。

「ほら笑って」

カチャッ。
2人並んで撮った笑顔の写真を『悠里さんと2人で出かけてきます。ちゃんと帰るから、探さないで下さいね』のコメントと共に、鷹文と潤へ。

「こんなの送ったら怒られない?」
さすがに少し心配になった。

「いいわよ。イヤなら朝早く飛行機で帰れば、昼には東京に帰れるし」
「それはそうだけれど」
なんだか不安だな。

「悠里さん携帯を貸して」
うん。

言われた通り差し出すと、電源をおとし一華さんの携帯と一緒にカバンにしまった。

「何か急の連絡があったら・・・」
「いいの。今日は携帯禁止」
「一華さん?」
一体何を考えているの?