「そうだ。私ねずっと予約していた寝台列車の切符が手に入ったの」

いきなり言われ、ポカンとしてしまった。

「寝台列車?」
「そう。夜に東京を出て朝には山陰に着くんだけれど、車内がすごく豪華で素敵なのよ。なかなか手に入らないツインの切符が手にとれたのよ」
「へえー」

今人気の女子旅って、聞いたことがある。

「一緒に行かない?」
「えっ、私?」

他に誘う人はいそうな気がするし、鷹文だって

「会社の後輩を誘う気だったんだけれど、今は仕事も休んでいるし、ちょっと誘いにくいの。良かったら悠里さん付き合って」
「でも・・・」

「来週の金曜日出発だから、大丈夫そうなら教えて」
「うん。でも、体は大丈夫なの?」

妊娠初期って大事にした方がいいんじゃあ。

「平気。鷹文も出張でいないから、2人で羽を伸ばしましょ?」
「うん。考えてみる」

この時、私はなぜ断らなかったんだろう。
来週は律也さんのご両親との食事会があるってわかっていたのに。