「点滴するの?」
内科の先生が不思議そうな視線を送る。

「ああ、昨日食事がとれていないみたいだし。念のためにね」

い、いや、それは、

「違います。昨日は友人がお見舞いに来てくれて、お土産を食べ過ぎて食事が食べられなかっただけで」
栄養は足りていますから。

「そんなの知らないよ。食べなかったお前が悪いんだろ」

ええええー。チラチラと内科の先生を見ても、
「まあ、お前に任せるよ」
助けてくれる様子はない。

「ごめんなさい。本当に反省しています。だから点滴は勘弁して下さい」
こうなったらひたすら謝るしかないと、私は潤に頼み込んだ。

「わかった。食事も薬もちゃんと飲むこと」
「はい」

「よし。じゃあ、明後日退院させてやる」
「ホント?」

やったー。やっと帰れる。

「ただし、」

え?

「明日は1日人間ドックだ」

へ?

「レントゲン、CT,乳がん検診、婦人科検診、胃カメラ。フルコースで入れてあるから頑張って来い」

う、嘘でしょ。

あまりのことに反論も出来ずにいると、いつも間にか潤の姿は消えていた。
この世の中、一番怒らせてはいけないのは医者だと改めて実感した。