「しっかりしろ」
近くのソファーに悠里をおろし、俺は悠里の状態を確認した。

これは間違いなく喘息の発作だ。それもかなり大きな発作。
早く薬を使って落ち着かせ、病院へ連れて行くしかない。

床に落ちていた悠里のバックを拾い、荷物をあさってみる。
悠里くらいの喘息患者なら必ず吸入薬を持ち歩いているはず。

あれ?
「お前、吸入は?」

「持ってこなかった」
「はあ?」
苦しそうに肩で息をする悠里を睨み付けてしまった。

「お前、死にたいのか?」
「だって」
「だってじゃない。自殺行為だぞ」
「・・・」

医者としてこんなに苦しんでいる患者に怒鳴るなんてしてはいけないと理解している。
でも、許せなかった。

「いいか、しばらく入院だからな」
「えええ、無理。ハアハアハア」

ダメだ。絶対に許さない。

その後救急車が到着し、俺と悠里は病院へと運ばれた。