その後、私達は普通に食事をした。

同じ規模の同業種の企業に勤め、その家の娘に産まれてしまった生きにくさは私も彼女も一緒で、意外なくらい話があった。
話をすればするだけ、鈴木一華さんが嫌いになれなくなっていく。
こんな形で出会っていなければ、良い友達になったことだろう。

「鷹文のこと、今でも好きなんですか?」
「え?」

すでにワインを2本ほど空け、かなり気持ちよくなったところで一華さんが聞いてきた。
そうか、彼女は私がまだ鷹文を好きだと思っているのか。

「違いますよ。私には婚約者がいるんです」
「え?」

「私は一華さんと違って本郷商事を継がなくてはいけませんからね。そのために結婚するんです」

それは私自身が決めたこと。

「その方が好きですか?」
「ええ、尊敬しています」

それ以上一華さんは聞かなかった。

「一華さん、また誘っても良いですか?」
「え、ええ」
戸惑いながらも返ってきた返事。

近い将来、鷹文のことも、鈴森商事の騒動もすべて決着したら、4人で飲みたいな。
私は本気でそう思っていた。